第9話 「猫の王」
決して、自ら吹聴した訳ではない。
しかし、会社の別部署の職員から「アジ絶好調なんだって!?俺にも教えてよ!!」
「ゴキブリは1匹見たら50匹いると思え」の格言・・・、ちと違うな・・・。
1人に話したら翌日には10人に伝わり、しかも、尾ひれか付いて広がるが如く、過大な幻想を抱いたようだ。
「そろそろデカアジ、終わりみたいっすよ。秋からで良いんじゃないですか?」
「いや、ちっさくても良い。楽しめれば。今日の退社後、アジングタックル買いに行く!!付き合ってくれ!」
(腐らない程度に腐るほど金を持っていると噂には聞いていたが、どうやら本当の様だ。)
5/22(月)退社後、キツマン・・・、もといマン〇ツ屋鶴岡店に。
僕は週末に山形市内で釣り具類を買うので、ヤマガブランクスを扱う庄内の釣具屋さんを把握していない。
でも、キツ〇ン山形店ではヤマガロッドが置いてあった。なら、鶴岡店でも有るだろう?!と。
果して、ヤマガのブルカレ68Ⅱを見つけたので薦めると一発でヒット!!
どうやらバイトは即、ヒットまで繋がる様だ。
リールもエステルラインも、僕が薦めた品をノータイムでカゴにIN。
やはり、腐らない程度に腐るほど金を持っている親父は最強だ!!
買い物を終え、内陸から庄内の職場まで、雨の日も冬の雪の日も毎日通勤している(!)、その親父を見送ってから、僕はアジング修行へ。
近くの港へ。
常夜灯下では、20cmに満たないアジが多数見え、サビキ師が準備中。
隣に入座し、早速キャスト開始。
すると、ほどなくして18cmがヒット。
元々リリースのつもりでいたのだが、後方に気配を感じて振り返ると、ニャンコ先生達が鎮座している。
リリースの小アジを拝領しようと、座って僕を見上げているのだ。
こやつら地域ネコの生き抜く処世術。
コヤツラは、“有能”と“無能”を見分ける術を持ち合わせている。
無能な男には、ネコ1匹ついては来ないハズである。
現に、昨年11月には、有能なお隣さん(アジンガー)の後ろに3匹の猫達が並び、無能な僕の後ろには皆無だった。
それが、半年後の今は、猫達が僕の後ろに列をなして僕を見上げているのである。
「ニァン、ニ~ァ~ン!」 僕は猫語で話し掛ける。(ケンカするなよ!)
アジを落とすと、一番大きな猫が僕の足元まで躊躇なく寄って来てアジをくわえて行く。
「ニァン、ニ~ヤァ~ン!」 僕は再び話し掛ける。(直ぐ釣ってやるから待ってろよ!)
二匹目を釣るのにモタついて、やっと釣り上げアジを落とすと、さっきアジを持って行ったハズの一番大きな猫が、再びアジを持って行く。
白チビが後を追いかけるが、勿論、奪取は出来ない。
「ニァ~ン、ニ~ヤン!」 僕はみたび話し掛ける。(直ぐに釣ってやる!)
こうして3~4匹の地域猫に、15~18cmのアジ約10匹を分け与えた僕。
更に、またもや釣ったアジを手に後ろを振り返ると・・・。
あれ!?1匹も居ない!?
「ニァ~ン、ニ~ヤン!」(アジを拝領して授けるぞ!)
「ニァ~ン、ニ~ヤン!」(だから、アジを拝領してやるぞと言っているのだ!)
でも1匹も姿を現さない。満腹になった様である。
どうやら、僕が猫の王でいられるのは、アジを釣れるだけではなく、猫が腹をすかせていていることも必要な様だ。
(今回はNO image)
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